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急増する「乳房注入異物」のトラブル 〜アクアフィリングの危険性と、いまお伝えしたいこと〜

2026.07.03
形成外科コラム

近年、全国の形成外科・美容外科において、過去に受けた「切らない豊胸術(乳房への非吸収性異物注入)」によるトラブルの相談が急増しています。永井病院の形成外科でも、こうした胸のしこりや痛み、変形、また注入異物の感染に悩む患者様からのご相談をお受けする機会が増えてきました。

中でも深刻な問題となっているのが、「アクアフィリング(ロスデライン等を含む)」と呼ばれるジェル状の非吸収性注入剤による健康被害です。今回は、なぜ今になってトラブルが多発しているのか、そしてすでに注入されている方はどうすればよいのかについてお話しします。

アクアフィリング(AQUAfilling)とは何か?

アクアフィリングは、使用された時期によりアクアリフト、ロスデラインなどいくつかの異なる名称を持つPAAG(ポリアクリルアミド・ハイドロゲル)と呼ばれる非吸収性充填剤です。「98%が水分でできているため安全」「ヒアルロン酸より長持ちする」といった謳い文句で、数年前まで手軽な豊胸術として広く推奨されていました。

アクアフィリングのリスクと実態(Nagai Hospital).png
実際には、注入から数年後に局所や全身の熱感、乳房の腫大、しこり、発赤、圧痛や疼痛、皮膚潰瘍、乳頭の隆起、乳房非対称、乳房変形や授乳機能の喪失など様々な合併症を引き起こすことが明らかになっています。

実際に起きている4つの主なトラブル

注入から数年(長い場合は5〜10年)が経過してから、突然以下のような深刻な症状が現れる「遅発性合併症」が多いのが最大の特徴です。

  • しこり(肉芽腫)の形成と硬化 体が注入物を「異物」と認識して過剰な免疫反応を起こし、石のように硬いしこりを作ります。
  • 激しい痛み・腫れ(感染症) 長期間無症状だったにもかかわらず、突然胸が赤く腫れ上がり、激しい痛みや発熱を伴う重篤な感染症を引き起こすケースが報告されています。
  • 体内での移動(浸潤) ジェル状の物質が被膜を作らずに周囲の組織へ浸み込むため、重力や圧迫によってお腹や背中、脇の下などへ流れていってしまうことがあります。
  • 乳がん検診(マンモグラフィ)への悪影響 乳腺の画像を白く隠してしまい、正確な診断の妨げになります。また、マンモグラフィで胸を強く圧迫することで、内部のジェルが破裂・移動する危険性もあります。

学会からの警告と現状について

こうした事態を受け、日本形成外科学会や日本美容外科学会をはじめとする関連学会は、2019年に「非吸収性充填剤の乳房への注入を強く非推奨(実質的な使用禁止)」とする共同声明を発表しました。同様に隣国の韓国、中国でも豊胸目的のアクアフィリングの使用について強い警告が発せられています。また、米国FDA(食品医薬品局)は豊胸目的に注入異物を用いることを許可していません。

現在、医学的に安全性が確立されている豊胸術は、自己脂肪注入か、安全基準を満たしたシリコンインプラントのみとされています。

すでに注入されている方へ

「昔入れてしまったけれど、今は症状がない」という方もいらっしゃると思います。まずは焦って不必要に胸を触ったり、強くマッサージしたりするのは控えてください。また、乳がん検診を受ける際は、必ず「アクアフィリング等の異物が入っている」と申告し、マンモグラフィではなく超音波(エコー)やMRIでの検査を選択してください。

一方で、「胸が硬くなってきた」「形が変わった(左右差が出た)」「痛みや熱感がある」という場合は、決して放置してはいけません。

アクアフィリングは組織の隙間に入り込むため、外科的な除去には専門的な技術と手術環境が必要です。症状を放置すると健康な乳腺組織へのダメージが広がり、手術の難易度がさらに上がってしまいます。

トラブルは決してご自身のせいではありません。「手軽で安全」という言葉を信じて治療を受けた方がほとんどです。
一人で悩まず、まずは当院の形成外科へご相談ください。エコー検査等で現在の状態を正確に把握し、患者様にとって最適な治療方針を一緒に考えていきましょう。

当院の特徴

永井病院では注入異物除去にあたり診察の上、適宜エコー、MRIを用いてアクアフィリングが体のどこに広がっているのか検査いたします。国内からも、豊胸目的に入れたはずのアクアフィリングが年月を経て下腹部まで移動したという報告があり、除去にあたっての画像検査は確実な手術を行う上で大切なプロセスになります。

また、手術にあたっては国内でも実施している施設がごく限られている、「小切開での内視鏡を用いた手術」を行います。
小切開でも内視鏡を使えば、異物が注入された乳房の中をきちんと目で確認しながら丁寧に除去をすることが可能で、小さな傷でより精度の高い手術が期待できます。手術は全身麻酔の上、1泊入院で行い、安全性にも十分配慮いたします。

▶ 手術画像を見る(クリックで表示)
内視鏡を用いた乳房異物摘出術
内視鏡を用いた乳房異物摘出術は、限られた施設で実施されている治療法の一つです。
当院では専門的な設備を用いて、安全性に配慮した治療を行っています。

※本治療に関する費用について、当院でのアクアフィリング等の注入異物除去手術は、健康保険が適用されない「自費診療(自由診療)」となる可能性があります。費用等に関する詳細は、診察時に詳しくご説明いたします。

※また、アクアフィリングが乳房の外まで広がっている場合など、状況によっては内視鏡や1泊入院では治療が行えない場合もありますので、診察の上の判断となります。

過去の治療に対する不安や後悔を抱え、「どうすればいいのか分からない」と一人で悩まれている方は決して少なくありません。しかし、現在の状態を専門医のもとで正しく知ることが、解決への第一歩となります。

当院では、患者様のお気持ちに寄り添いながら、胸の健康と日々の安心を取り戻すための最適なサポートを提供いたします。少しでも胸に違和感がある方、あるいはご自身の現状を確認しておきたいという方は、どうぞお気軽に永井病院 形成外科までご相談ください。

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